樽酒をご存知かな?
鏡割りなんかでバーンとやる、あれじゃよ。
最近、お店の前なんかに飾ってあるのは、中が発泡スチロールのダミーじゃがな。
本物は、杉の木樽にわらを巻き、コモで包んで縄で巻いたものなんじゃ。
その木樽に入った酒は、杉の香りがしてなかなか趣があるんじゃよ。
しかし、長時間樽の中にあった酒は、木の香りが強すぎて呑みにくい。
江戸時代は酒といえば、「灘の男酒」「京の女酒」と言って、灘や京都の酒が珍重されたんじゃ。
灘の宮水、今の兵庫県あたりの水は硬水で、パンチの効いた辛口の酒が出来た。
京都のあたりの水は軟水で、優しい口当たりの酒が出来ていたんじゃよ。
何で硬水じゃと辛口で、軟水じゃと甘口になるのかって?
それを話すと長くなるが、
簡単に言うと、硬水じゃとミネラル分が豊富で醗酵が活発になり
軟水じゃとミネラル分が少ないから醗酵がゆっくりになるんじゃ。
まっ、これはまたにしよう。
「灘の男酒」「京の女酒」の名声は、当然お江戸にも伝わった。
そんなに旨い酒なら、江戸に持って来いというわけで、
灘や伏見から木樽に詰め込まれた酒が、ぐるりと海を渡ってお江戸に着いた。
長旅を終えた酒は、しっかりと杉の香りと色を吸い取り、
ものすごく呑みにくい酒になっていたろうな・・・。
それでも、やせ我慢の江戸っ子たちは、「やっぱり灘の生一本は旨い!」と、
顔を歪めながら呑んでいたんじゃろう。ご苦労なことじゃ。
今ではステンレスやホウロウなんかで、品質を守る技術が発達して、
いつでも、日本全国の旨い酒が呑める。
幸せなことじゃなー。
技術発達に貢献してくれた江戸っ子たちに感謝じゃな。
жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж