酒仙のおはなし 第七話

 

 

樽酒をご存知かな?

 

鏡割りなんかでバーンとやる、あれじゃよ。

 

最近、お店の前なんかに飾ってあるのは、中が発泡スチロールのダミーじゃがな。

 

 

本物は、杉の木樽にわらを巻き、コモで包んで縄で巻いたものなんじゃ。

 

その木樽に入った酒は、杉の香りがしてなかなか趣があるんじゃよ。

 

しかし、長時間樽の中にあった酒は、木の香りが強すぎて呑みにくい。

 

 

江戸時代は酒といえば、「灘の男酒」「京の女酒」と言って、灘や京都の酒が珍重されたんじゃ。

 

灘の宮水、今の兵庫県あたりの水は硬水で、パンチの効いた辛口の酒が出来た。

 

京都のあたりの水は軟水で、優しい口当たりの酒が出来ていたんじゃよ。

 

 

 

何で硬水じゃと辛口で、軟水じゃと甘口になるのかって?

 

それを話すと長くなるが、

 

 

簡単に言うと、硬水じゃとミネラル分が豊富で醗酵が活発になり

 

軟水じゃとミネラル分が少ないから醗酵がゆっくりになるんじゃ。

 

 

まっ、これはまたにしよう。

 

 

 

「灘の男酒」「京の女酒」の名声は、当然お江戸にも伝わった。

 

そんなに旨い酒なら、江戸に持って来いというわけで、

 

灘や伏見から木樽に詰め込まれた酒が、ぐるりと海を渡ってお江戸に着いた。

 

 

 

長旅を終えた酒は、しっかりと杉の香りと色を吸い取り、

 

ものすごく呑みにくい酒になっていたろうな・・・。

 

 

 

それでも、やせ我慢の江戸っ子たちは、「やっぱり灘の生一本は旨い!」と、

 

顔を歪めながら呑んでいたんじゃろう。ご苦労なことじゃ。

 

 

 

今ではステンレスやホウロウなんかで、品質を守る技術が発達して、

 

いつでも、日本全国の旨い酒が呑める。

 

幸せなことじゃなー。

 

 

 

技術発達に貢献してくれた江戸っ子たちに感謝じゃな。